■ 音風景3
ミュージシャン '01/08 村まつりにて
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「ぽっぷすちゅう音楽ジャンルがあるそうだけど、 ご縁でその人等を夏祭りに呼ぶことにした。」 「出演順番は決めるので後は頼む。」 夏祭り準備の寄り合いでわかったようなわからないような依頼を 受けてから、準備の間もなく迎えた祭り当日。 500世帯の、せいぜい「村」規模の盆踊り祭り。 毎年同じような演目が用意されるこの祭りに「新しい風を」、 とは言え、ラッパスピーカーにカセットデッキにマイク2本という 町内の設備ではなんともならず、自分の機材を持ち込んだ何とも アンバランスなPAセットで、ステージ慣れした方を迎えられるか? 迎えて良いか? あるいは、場は持つか? また、村独特の「ノリ」にあうのか・・・ どうでも良いことを思いつつ、準備をしながら、ボーカリストの TさんとピアニストとしてのNさんを迎えた。 簡単な音出し。 素直でスラッと伸びていく声。多彩なピアノとの交歓会。 自分も含めて、年寄りには少し難しいメロディー。 うーん、スター性というのは、技術だけでもなくルックスだけで もなくうまく備わるもの、的な思いも込め、最初の観客としての自 分。 うちの村で受けると良いな、とは思いつつ、ただでさえ音が悪い の上に、少しでも音量を上げると割れてしまう音響と格闘した。 わずかな時間ではあったが、音出しの間に感じていたのは、少し の懐かしさと、あこがれ。 彼らのメロディーや歌声・演奏に関してはアマチュアとは言え、 オリジナリティーをたたえ、「懐かしい」と言った感慨を持つ物で はない。 恐らく感じていたのは、かつて遠い昔に始めて自分の意志で買っ たレコードに針を落とした瞬間の「音」に対するときめき。その懐 かしさというのは、自分が好きになれた音楽に対して何回も感じて 来た空気に近い物。また、あこがれとは、テクニックや才能・努力 やらに与えられる尊称。 彼らのステージは極めて限られた時間だったが、それでさえ遅れ に遅れて、祭りのスケジュールは進行した。 途中から祭りの役員でさえ外に出るのをためらうような土砂降り の雨。 即席ステージに容赦なく降り込む雨、楽器・機材の危険。漏電の 気配もあり、触れ場所が悪ければびくつくようなしびれ・・・果た して、「次を迎えて良い物か」というほどの条件の中で「厭わず」 の彼らを迎えた。 若い音楽を聞き慣れているとは思えない聴衆に対して、しっかり と会話しながら、自分たちのカラーを込め、迎合することもおもね ることもなく明るく進行する彼らのステージ、引き込まれていく聞 き手。 気持ち良いね。 自分と同様に少しの懐かしさとあこがれを感じている人はいるか、 ふと振り返る。 皆、さまざまに楽しんで、土砂降りの村祭り。 これが主演目として終わる予感のする夜。 紅白の横断幕を背に、500Wの工事用電球に照らされて、濡れ た髪の毛が光る。