随想 「ミニ太陽とご来光の道」
土岐市長 塚本保夫
地上にミニ太陽を作ろうを合言葉に、昨年3月、市内に完成いたしました文部省核融合科学研究所では順調に研究が進展しており、世界から大きな注目と称賛を博しておられます。
完成以来一年間の研究成果について、国内外の専門家により外部評価がなされ、その結果が報告書にまとめられ発表されておりますが、いずれも着実な実績に高い評価がされております。
21世紀に向けて科学技術創造立国が国是とされ、知的財産権などを基盤として“知的存在感のある国”を目指す上で、世界的な注目を集める核融合科学研究所が市内に立地いたしましたことは、全国的にも極めて意義深いことであります。
ところで、秋分の日が近づいておりますが、地上から見る太陽の位置について興味深いお話を、核融合科学研究所の井上徳之先生から、雑談の中でお聞きしましたので紹介いたします。
それは「ご来光の道」ということについてであります。
神々の集う出雲大社は富士山の真西に位置しており、春分と秋分の日には真東から太陽が昇るため、富士山の真上を通った光が出雲大社に達することとなり、これを「ご来光の道」と呼ぶそうであります。
地図上で富士山から真横(東西)に引いた線がこれにあたり、この線上には、各地で由緒ある“一宮”を名乗る古い神社が並んでいるといわれます。
例えば、この線が房総半島に上陸する場所が千葉県「上総一宮・玉前神社」、相模川と交わる場所が神奈川県「相模一宮・寒川神社」、富士山頂には「浅間大社奥宮」、木曽三川の手前には愛知県「尾張一宮・真清田神社」、関ヶ原近くの垂井には岐阜県「美濃一宮・南宮神社」、そして、但馬、因幡、伯耆を経て、島根県「出雲大社」を通り日本海に抜けております。
本州を横断する全長約700キロメートルの線上のわずか数キロメートルの幅の中に、これらの神社が並んでおり古い時代に神社の場所がどのように定められたのか、古代への興味が深まりますが、東濃各地にあるペトログラフの謎と共に古代人のロマンを感じます。
神社に祭られる天照大神は神話の世界では「太陽」をつかさどりますが、現代の科学では太陽が核融合反応で輝いていることが解明されております。
地上にミニ太陽を作り出す核融合の世界最先端の研究施設である文部省直轄の国立大学共同利用研究機関が前述の「ご来光の道」の上に立地いたしましたのは奇しき因縁であります。
ちなみに、富士山は北緯35度21分58秒、出雲大社は北緯35度23分5秒、核融合科学研究所は北緯35度19分17秒であります。
地球環境を守る救世主として核融合研究が、安全第一に一層進展することを願っており、皆様のご理解ご協力をお願いたします。 |