■ 久遠寺春吟行
身延山久遠寺 春の吟行(4/1)
=身延山久遠寺=
日蓮宗総本山として著名な寺院だが、春の枝垂れ(しだれ)桜が
見事な寺としても知られる。
花の時期には多くの参拝客・ 信者・カメラマンを集め、
ひときわ華やかな装いとなる。
今回、この寺への吟行を俳句雑誌から依頼されたそうで、
「写真 が必要」と言うことで、その係として同行した。
(そうでなければ、自分のような初心者が同行できるメンバー構成ではない)
現地につくと、前日からの冷たい雨は、当地にあっては雪となって残っていた。
身延の気候がこちらよりも数段厳しいことを改めて実感した。
宿坊に荷物を下ろし、まずロープウェーで登った奥の院は、まさしく冬の山の様相。
本来だったら早春の季語である筈の「冴え返る」「浅春」などの言葉すら、
早く感じられた。遠く南アルプスの山々も七面山も殊更、冬。


雪の奥の院
再度ロープウェーで下れば、春の日差しを浴びて「斑雪」となり、
また、雪のない地方にいる自分にはなかなか経験ではない「雪解」状態。
何よりも桜の春。春の季語が全部当てはまると言っても良い状態だった(そうな)。

本堂前
宝前へ雪解雫の御簾くぐる
枝垂れ花空から地へと継ぎ至る


句会会場の宿坊
しだれ桜と雪のコントラストは見事としか言いようが無くとても、うららか。
(自分 は始めて桜の開花時に居合わせた)
祖師堂改装中の臨時回廊が「いかにも工事中」という感じで、
写真を撮るには制限を受けるのが悔やまれるところ。
作句としては、知っている場所だから良いが、知らなかったら、
「どこから見るか」から始まったこととおもう。初心者のつらさ。
参加各位はレベルの高い俳句が多種多彩だったが、よくいきなり
行って作ることのできるもの。
自分としては自分の身延山への心情風景を句にしてみたつもり。
一緒に居られた方に御廟所を紹介したりしたため、
「仏教に詳しいのか?」等は聞かれた。
こちらも初心者、とは白状したが、改めてこうやって書くと、
意識して作った俳句に見えるかも知れない。

草庵跡
草庵や合掌の手に斑雪(はだれ)溶く
浅春や遠き読経に和し居たり
唱題や草庵跡に冴え返る
春の水合掌の如掬ひけり
妙法の石段険し春霞
春障子越え来る法の説くを聞く
草庵や合掌の手に斑雪(はだれ)解く
枝垂れ花空から地へと継ぎ至る
春の雪今日一日を生きてをり
宝前へ雪解雫の御簾くぐる
霊山と雪解日差しを共に浴ぶ
花人の人、人、見場と見場を縫ふ