■ 音風景8
ぴっころこんちぇると(ピアノ発表会)にて
=みかんの花咲く丘=
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写真は主催者よりお借りした
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写真は主催者よりお借りした
ご縁あって、ピアノ発表会を聞かせて頂いた。 一言で言えば「自分の音は「駄楽」とでもいうべきものであること を改めて認識した」というところか。いい加減な音使いを繰り返して いるのも恥ずかしいが、今更変えるのも大変。 クラッシックの音と正規のカリキュラムによる教育を否定する声を 聞いたこともあるが、自分には逆立ちしてもこんな音楽はできない。 素養のない自分にはうらやましい。 丁寧な音を聞きながら、指導者と子供たちの真摯なキャッチボール を思った。 最後に声楽も専門とされるご先生より「歌」を聞かせていただいた。 「みかんの花咲く丘♪」 「歌の背景にある想い」いうような言い方をするけれど、自分にと ってのこの歌はひとつの風景がある曲。ひなびた埃っぽい中に冬の陽 が射し込むような風景を思いうかべる。 先生の歌声は、アップテンポに良い空間を醸し出しながら、洗練さ れた景色を作り上げていく。 あるいはこんなスケッチがあるやも知れぬ。自分が旅したところの 風景を美しく収録されたフィルムをテレビで見ている気分。 ドレスアップされた舞台を拝しながら、ジーンズで小汚く場違いに いる自分。透き通った空間の向こうに、クラッシックからのアプロー チを楽しく頂いた。 しかし・・・ハイテンポのすてきな雰囲気の中、客席に、「一緒に 歌いましょう♪♪」とお呼びかけしておられましたが、協力は難しい 物があった。自分あたりが下手に協力してぶちこわすよりましかも。 そうお考えの方も多かったかもですが。 =蛇足= よせば良いのに、的。 この音楽シリーズ、音楽の場違いな楽しみ方を発表するような場にな りつつある・・・ 母の生まれはみかん山と海が間近にせまった小さな町。 切り立った山にみかんの木が植わり、 船が駿河湾を渡る景色が見え、まさしく歌の風景。 あの歌が作られた頃から変わった光景と言えば、整備された林道と 東名高速が下を通ること、 みかんを山から降ろすための架線が架かったことか? 今もあたりに立つとあの歌の世界に居て、 山に響くこだまを聞いているよう。 最近は母の実家に行くことも少なくなったが、 先日「切った木があるので、持っていってくれ」 と言われ軽トラックを運転した。 子供の頃の思い出に残る風景がそこここにあった。 若かった両親が幼い自分を連れて手伝いに来て、 木々を身軽に移っていた、みかんの収穫の風景を思いつつ。 ーみかんの花咲く丘ー♪ みかんの花が 咲いている 思い出の道 丘の道 はるかに見える 青い海 お船が遠く かすんでる 黒い煙を はきながら お船は どこへ行くのでしょう 波に揺られて 島のかげ 汽笛がぼうと 鳴りました 何時か来た丘 母さんと 一緒にながめた あの島よ 今日も一人で 見ていると やさしい母さん 思われる 先般母が作っていたみかんがテーマの句 自分には光景が何となく分かる気もするが、 普通じゃ通じないかもしれない。 それに、大会句を意識しすぎたようでちょっと凝りすぎな感じも。 = 蜜 柑 = 神山孝子 奥行きの深かき家並や蜜柑咲く 出稼ぎの棲みし棟古り花蜜柑 母情噴く蜜柑の花の匂ふ径 段畑は日の矢面に青蜜柑 地を這へる鈴なりの枝青蜜柑 堰く沢に雨の昴り青蜜柑 頑張らねば荒畑となる青蜜柑 籠しよいこ肩にずしりと蜜柑負ふ 切り口を整ふ習ひ蜜柑採 猿のごと枝渡りして蜜柑切 蜜柑切る鋏の谺きりもなし 早生蜜柑供へて灯す屋敷神 段畑に溢れんばかり蜜柑熟れ みんなみに一湾望む蜜柑山 蜜柑積む金の目盛りの棹秤 庫の土間に密柑山積み選別す きつちりと選別したる蜜柑かな 段畑はレールで結ぐ蜜柑山 うだつあぐ貯蔵庫対に蜜柑畑 沢音に山気高まる蜜柑晴 03.06