■ 音風景9
骨董屋にて
=音の風景 無音 あるいは蛍光灯のうねり音=
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暮らしやら仕事やら祈りやらの痕跡が 雑然とある中、 いくつもの重層の空気を感じながら 慣れぬまま、そこにいる。 くすんだ香の中、店の隅に少女がたたずむ気がする。 この気の中にいたら、どんな風に育つのだろう。 どんなものが育まれるのだろう。 気が付けば、人形だったりする。 「物」がそこにある。 自分が知る木の香とは違う匂い 自分が知る布の滑とは違う触り 自分が知る陶の白とは違う濁り 相対して自分がいる。 ものめずらしくそこにいる。 蛍光灯のあかりの下で、何かの音を聞く。 ここにいる「物」達が、 かつて発した音かは知らず。 ただ、シャッターの音を不器用に鳴らす。 ひとつひとつの品の断片を内にとどめて、 店を辞す。 冬の空気に挨拶をするかに 暖簾をくぐって外に出た。 外には「音」やら「今」が 乾いた空気の中で、 目の前を往復していることに、 安堵した。![]()