■ 音風景11
東名高速道路 富士川SAのライブにて
=旅人=
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ご縁あって、富士川サービスエリアでのライブを聴かせていただいた。 ごく細い糸だが何年かに一度つながるような不思議なご縁。 糸の先は「ともちょこさん&ダックさん」という日本のポップソング系 のデュオ。 ネットで偶然お二人のライブの日程を知った。梅雨入り間近。湿り気の ある妙に優しい空気の中、自分は現地で彼らにご挨拶した。 ギター&コーラスのダックさんとボーカルのともちょこさん(ギターも 弾かれる)。最小構成のバンドだがバランスが良く、絶妙。 生きることに前向きな歌が多く、歌の丁寧さ、ハイトーンの柔らかな歌 声。ダックさんのフィンガリングを基調に歌を紡ぎ出すことをよくご存知、 と言う感のギター、よくこんな風に人が出会えた物と思うようなデュオ。 これまでと同様、今回もあっという間の一時間だった。 で、久しぶりにこの音楽雑記、「何だか理屈っぽく勘違いコーナー」を 書いてみたくなったのは、歌のすばらしさもさることながら、不思議な思 いを記憶しておきたかったから。 ライブの場所は東名高速道路 富士川サービスエリア。自分は地元民向 けの遊歩道から入ったが、ここに居るほとんどすべての方は施設の職員な どを除けば東名高速の利用者であり、言ってみれば「旅人」。 ここで開かれているライブは、あえて言うなら新幹線の駅でライブする ようなものか?一般鉄道の在来線の駅とは違う。それも見送りの人が居る ような駅ではない。車の中というプライベート空間から少しだけ空気を外 に解放するエリア。 聞き手は一瞬の旅人、まして、歌い手も実は、旅人。 高速のパークエリアという特殊な空間でのライブ。ここに居る方は「料 金」「時間」という制約のある人。長い行程の方も居るだろう。午後の下 り線と言うこともあり、ナンバーは中京・関西圏が多く、パーキングの車 を見ても地元のナンバーなどほとんど無い。 どれだけの方がこのお二人を聞くのだろう。「聞いて欲しい」そんな思 いの少しだけ内輪的リスナーとしての自分。 ライブでは歌の合間の丁寧な優しいトークが印象に残った。「旅人」と してのそこにいる方に対して、運転の注意、休み方、水分補給、この地区 の象徴である富士山への思い。東北地方の地震の報があればさりげなくこ の中にはその関係者が居るかもしれないという気遣いをし、また、さらっ と仕入れてきた知識として地元の産品や店の品を上手く織り込んだトーク。 むりやり地元を持ち上げる訳でもなく、ありがちなマイク慣れたテンシ ョン高いキンキン口調でも無く、ごく自然。あえていえば、昔、トラッカ ー向けの深夜ラジオ番組で女性パーソナリティーが落ち着いたお姉さん的 語りかけをしていたのを思い出す。 あたりまえかもしれないけれど、あたりまえのことができているという 安心感。 自分にとってコミュニケーション能力・表現力が極端に偏っていること と、欠落の自覚症状著しい「気遣い」という言葉も思い出す。 ここで歌われる歌は「生きる事への応援歌」。何度も何度もいろいろな 場面で歌い込んできた歌だろう。歌われるご本人自身にも歌いかける歌か もしれない。もちろん、今日、「なぜかここにいる」自分にも届く。 高速道路のサービスエリア、ソフトクリームや揚げ物の串を持って腰を 据えて聞いている方もかなり居た音楽会。 歌って良いね。自分も音楽をやりたい、いろいろな意味でうらやましい。 そんな風に思えた日。 10.06